新開発バリ取りツールの効果検証 ―金属表面の微細形状観察―
本間商会 本間 忠樹様 インタビュー 2016/08/05(金)

今回インタビューさせていただいた内容は、8/25(木)~8/26(金)開催の「JSTフェア」にて展示される予定です。

本間商会 本間様

本間商会 本間様


Q 本日は本間商会本間様に、新開発バリ取りツールの開発についてきっかけやご苦労された点についていろいろとお伺いしたいと存じます。 本間様、お忙しい中お時間をいただきありがとうございます。
まず初めに新開発のバリ取りツールについて簡単に説明していただけますか?


(本間)新開発バリ取りツール商品名BARUZOは、空気を動力源とした「バリ取りツール」です。特殊な樹脂でできたブラシを高速振動させてワークに当て、大面積・複数箇所を一度に処理し、短時間でバリ取りし滑らかにすることを特徴としています。

Q 開発経緯について教えてください。

(本間)地元の異業種交流会でのディスカッションがきっかけです。 課題を共有した有限会社本間商会、株式会社ワイテック、の2社が共同で開発しようということになりました。 この機械化が進んだ現在でも機械加工の現場では人力が頼りのプロセスがいくつかあり、その代表が「バリ取り」現場なのです。
 金属加工時等に生じる「バリ」は、人力による「ヤスリ」等で落しています。 様々な材質についても本体を傷つけない技能が必要で、また大面積や複雑な形状への対応などでは大変時間がかかるものです。 そこで、誰でも簡単に安全に速く処理できる「バリ取りツール」を開発しようということになりました。

Q 開発のご苦労をお聞かせ下さい。
バリ取りツールBARUZO、アルミ合金7075 に4 枚刃φ8 のエンドミルで深さ3 mm の溝加工後に発生したバリ付きサンプル

バリ取りツールBARUZO、アルミ合金7075 に4 枚刃φ8 のエンドミルで深さ3 mm の溝加工後に発生したバリ付きサンプル


(本間)ほとんどの現場に整備されている動力源の内、電気ではなく圧縮空気を活用しようというのは当初からのコンセプトの一つです。 電気では電動モーターの重さが作業員の負荷になるし、発熱が研磨ブラシの物性に影響しバリ取り性能に影響を与えます。 空気を活用した横振動機構は従来に経験がありました。 一番苦労したのはブラシの開発です。 対象を傷つけずバリのみを効率よく取ること、対象物のサイズ、形状に適応可能なこと、バリ取り効果の再現性が高いこと、ローコストで安定供給できることなどの条件を、アンドで満たすブラシの材質、形状を試行錯誤で完成させました。 そして自信を持って展示会への出展ややデモに挑んだわけです。 ところが、総じて好評な中にも参加いただいたものづくり大手の顧客からは「興味がある」、「自社の工場で試してみたい」といった前向きな意見と共に、「バリがちゃんと取れているか微視的に確認できているの?」、「平坦部への影響の度合いはどんな評価している?」との意見もいただきました。 「性能の見える化」が十分にできていないという課題が明確になりました。

Q そこで豊田工大の佐々木先生に相談されたのですね。

(本間)取引させていただいている中日信用金庫様と名古屋産業振興公社名古屋市新事業支援センターにお話ししたところ、JST産学連携推進マネージャーの松山さんをご紹介いただきました。 その瞬間から大きく展開し、みるみる明らかになっていったことに驚きを覚えています。 松山さんはご相談したその場で豊田工大佐々木教授に電話され、その日すぐにお伺いできました。 先生はバリ取りツールを手に取り、ワークをいろいろ指で触り「面白いねー。まあやってみましょうか」と。 

2x3mm2の広域をデジタルマイクロスコープ観察したもの

2x3mm2の広域をデジタルマイクロスコープ観察したもの

Q 豊田工大での観察結果はいかがでしたか?

(本間)当初、電子顕微鏡による観察だけの予定でした。 ところが佐々木教授のご提案で、せっかくなので形状も精密に測ってみようということになり、デジタルマイクロスコープや非接触三次元表面形状・粗さ測定器など最先端の精密形状測定を実施していただく事になりました。 また、研究スタッフの方々には測定実施だけでなく、測定原理から結果の解釈についてもいろいろ教えていただきました。 これにより、我々は「豊田工大という第3者の信頼のおける測定結果」を得、「性能の見える化」が出来ました。 今は自信をもって事業を進めることが出来ます。

Q プラットフォームを利用されての感想はいかがでしょうか。

(本間)2つの大きな発見がありました。 一つは大学で最先端の研究をされている先生が、中小企業が直面している現場の課題に正面から向き合ってくれるということ。 そしてその最先端の技術が我々でも活用できるということ。 二つ目はそのスピード。 JST松山さんに相談してから完了まで、一気でした。

Q よろしければ今後の展開を教えてください。

(本間)発売以来好評で800台を超える実績がありますが、やはり中京地区に集中しています。
デモ映像をYouTube で情報発信し(https://youtu.be/vRg_x2HMYug)、アクセス数から国内外からの高い関心を実感していますが、やはりこうしたものは実物でテストして良さを実感していただき、はじめて実需につながるものです。 商圏を関西、関東、日本国中、そして世界に如何に広げていくかということが最大の課題です。

本日は貴重な時間をありがとうございました。