Q 本日はお忙しいところお時間をいただきありがとうございます。最初にこれまでのご経歴をご紹介ください。
・大学の専門は電気・電子で、修士課程ではシリコン薄膜トランジスタの研究に携わりました。ガラス基板上にアモルファスシリコンを堆積し、レーザで結晶化してトランジスタを作り評価していました。2010年に修士課程を卒業してすぐに学会で懇意にさせていただいた東北大学の先生から広島大学で進められていた研究プロジェクトをご紹介いただき、2010年春から広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所に赴任しました。私は東北出身なのですが、初めて故郷を離れ広島に住んでいます。東北の震災時は広島大学にいましたが、実家は大した被害を受けず安心しました。
・広島大学では低誘電率層間絶縁膜の材料研究に携わりました。LSIの配線遅延の低減を目的とした低誘電率ポーラスシリカ膜の作製と特性評価を行いました。プロジェクト終了後2012年に始まったナノテクノロジープラットフォームの技術支援員として勤務しております。
Q 技術支援のお仕事の様子をお聞かせください。
・ 微細加工プラットフォームでは、これまで身に着けた半導体デバイスの専門性を生かした業務に携わるこができ充実した時間を過ごしています。メンテナンスを含めて担当している装置はスパッタ系の薄膜成長装置です。Cu, Alなど7種以上の金属とSiO2膜を堆積できる5台の装置を担当しています。これ以外にXPS、FTIR、SIMSなどの測定・分析装置も扱います。デバイスプロセスはリソグラフィからイオン注入、エッチングまで一通り対応します。通常はほぼ一日クリーンルームに入っており、装置のインストラクション、メンテナンス、そして技術代行ならびに共同研究の実験を行っています。装置のマニュアルは完備しており、機器利用される利用者が困らないように準備しています。
Q 担当している技術支援は年間何件でしょうか。
・広島大学には技術支援員が2人いますが、私は年間を通じると技術代行が10件、共同研究を6件ほど担当しています。今日時点では、技術代行1件、共同研究3件が走っています。利用者の要望を聞きながら、機器の空き状況やメンテナンス状況を判断し実験の手順を考えて効率的な支援ができるように努めています。
Q お仕事を進めていく上で何か気をつけていらっしゃることはありますか。
・半導体のプロセスですので、多様な利用者から持ち込まれる試料相互のコンタミ(汚染)が発生しないように気をつけています。対応策を検討していますので、これまでお断りしたことはありません。
学生さんの利用も多いのでトラブルが発生しないように指導しています。また自分としては装置メーカーに頼らずに装置のメンテナンスができる力をつけたいと思っています。一通りプロセス装置は使いこなせますが、広島大学は機器の数が多くまだ利用法を習得していない装置もあるので順次習得しているところです。
Q 支援業務で印象に残っている事例があればご紹介ください。
・電子線露光の解像度や繋ぎ精度の極限性能を引き出す必要がある支援業務がありました。その時は条件出しに大変苦労しましたが、結果を出して利用者様に喜んでいただけました。またある企業様から基板も含めて全層が絶縁物で構成されている多層膜基板のパターニングを依頼されました。露光時ならびに深掘りエッチング時のチャージアップの対策に時間がかかりました。基板が高価な材料であったため、時間切れで企業様から中止の連絡をいただいた時は申し訳なくまた悔しい思いをしました。あまり経験の無いサンプルでしたが、次の機会に備えて対応策を講じておく予定です。
Qクリーンルームの安全管理はどのようにされているのでしょうか。
・ 私を含めて施設担当者が3班に分かれて簡易な見回りを毎日、フルの見回りを1週間に一回やっています。夜間のクリーンルーム利用は広大の職員ならびに学生は2人以上で入室すること、装置担当者が不在の場合は危険なガスを使わないことなどの条件のもと24時間入室できます。学外の利用者は、施設担当者が不在の時は使えません。セキュリティカメラやICカードによる入退室など安全管理には気をつけています。
Q 何か自己啓発されていることはありますか。
・ 研究できる設備がある職場ですので、自分の能力を高めるために社会人ドクターに入学しました。社会人ドクターの仕事は夜間と土日だけですので時間的には厳しいですが、支援業務と両立させて勉学にも励んでいます。
Q 趣味や特技、もしくは何か仕事以外にされていることはあるでしょうか?
・今は特にありません。学生の頃はスポーツをしていましたが、今は気の向いたときに2~3キロ走っています。今年は雨が多くタイミングが合わないときもありますが、気分転換にはとてもいいです。
Q 休日はどのように過ごされているでしょう?
・社会人ドクターの研究活動をしています。気が滅入っているときは、少し走ります。あとは部屋の掃除くらいです。簡単に切り替えができる程度の趣味が欲しいところです。
本日はお忙しいところお話をお聞かせいただきありがとうございました。佐藤さんは利用者の満足のいく支援を目指し責任を持って取り組んでいらっしゃる若手の技術支援者です。ちなみに写真写りが悪いと気にされていましたが、そんなことはないと思います。今後とも御活躍を期待しております。